ブランディングの5大疑問 · 03 / 053 min read

世界観・“らしさ”はどう作る?

素敵な色やフォントを選べば“世界観”ができる——と思われがちです。でも、実は順番が逆。世界観は「服選び」ではなく「性格」に近いものです。

Answer · 30秒でわかる

“らしさ”は、色やフォントを選んで作るものではなく、「何を信じ、何を約束するか」から滲み出るもの。順番を逆にすると失敗する。

  • 見た目から入ると、たいてい失敗する
  • 先に決めるのは、たった“一行”の約束
  • その約束を全接点で一貫させると、らしさは勝手に伝わる
見た目から始める失敗パターンと、約束→振る舞い→見た目の順で作る成功パターンの対比図
図1 — 見た目は最後。「約束 → 振る舞い → 見た目」の順に決めると、ぶれない。

— 01 —世界観は「服選び」ではなく「性格」

人で例えると、世界観はその人の性格です。優しい人は、服装も言葉づかいも態度も、なんとなく一貫している。逆に、どんなに高い服を着ても言動がバラバラな人は「結局どんな人?」と掴めません。

ブランドの世界観も同じです。色やフォント(=服)から入ると、「なぜその色なのか」を誰も説明できず、担当者が変わるたびに揺れてしまう。今日はかっこよく、明日はかわいく、と迷走して、結局“らしさ”が定まらないのです。

世界観は“選ぶ”ものではなく、何を信じているかから自然と滲み出るもの。だから、最初にやるべきはデザインツールを開くことではありません。自分たちがどんな価値観の会社なのかを、言葉で掴まえることです。

もう一つ大事なのは、世界観は“足し算”では作れないということ。おしゃれな要素を次々に盛るほど、かえって「結局どんな会社?」とぼやけていきます。個性の強い人が、あれもこれも主張せず、一本筋が通っているのと同じ。世界観は、盛ることではなく、貫くことで立ち上がります。

— 02 —だから、見た目の前に「一行」を決める

世界観づくりの出発点は、ビジュアルではなく「自分たちは何を大事にする会社か」を一行にすること。その一行が決まると、色・言葉・写真・接客の判断基準が自動的に生まれます。「その一行らしいか?」で、すべてを裁けるようになる。

たとえば「気取らず、本気」を掲げたとします。すると、堅すぎる敬語は“気取り”だから却下、盛りすぎたキラキラ写真も“本気っぽくない”から却下、と判断が一瞬でできる。逆にこの一行がないと、あらゆる場面で「どっちがいいか」を感覚で悩み続けることになります。

世界観とは、飾りつけのルール集ではなく、日々の判断のものさしなのです。だからこそ、デザインが得意でなくても作れます。必要なのはセンスではなく、「自分たちは何を大事にするか」を言い切る勇気。まずはその一行から始めてください。

— 03 —一貫させると、“らしさ”は勝手に伝わる

一行が決まり、すべての接点で守られると、受け手は言葉にできなくても「なんか、この会社っぽい」と感じ始めます。これが“らしさ”の正体。派手さではなく、一貫性が“らしさ”を作るのです。

逆に、媒体ごとに雰囲気が違う会社は、一つひとつがどれだけおしゃれでも、像が結ばれません。Webは洗練、SNSは砕けすぎ、営業資料は堅い——このズレを、お客さんは無意識に感じ取り、「結局どういう会社なんだろう」と距離を置いてしまいます。

世界観は、足し算(もっと盛る)ではなく、引き算と一貫(ぶらさない)で立ち上がります。新しい飾りを足す前に、まず“変えない一行”を決めて、それを全部の接点で守り抜く。地味に見えて、これが世界観づくりのいちばんの近道です。

一つの核から言葉・態度・見た目・価格が一貫して展開する同心円の図
図2 — 一つの核(約束)から、言葉も態度も見た目も価格も、一貫して広がる。

— 04 —明日から、できる一歩

まずは、次の会議で「それ、うちらしい? らしくない?」と口に出してみてください。判断のたびにこの問いを挟むだけで、“らしさ”は少しずつ輪郭を持ち始めます。大がかりなデザイン刷新は、その後でいいのです。

そして、いまの“らしさ”がどれくらい一貫して伝わっているかは、ブランドチェックで測れます。世界観づくりも、まずは現在地の確認から。5つの問いが、次に整えるべき一点を教えてくれます。

視点を切り替えて見る

順番で、結果はこんなに変わる

おしゃれになったが、記憶に残らない

先に色やフォントを決め、素敵なサイトができた。でも「で、何の会社?」には答えられない。見た目は整うのに、像が結ばれない。担当や流行が変わるたびに、また作り直しになります。

地味な初速でも、らしさが積み上がる

先に「何を信じ、何を約束するか」を一行で決めた。その一行に沿って、言葉も態度も見た目も揃えていく。派手さはなくても、接点が増えるほど像が濃くなり、やがて指名で選ばれ始めます。

Q&A

よくある誤解に、先に答えます

センスがないと、無理では?

いりません。“らしさ”はセンスではなく、「何を大事にするか」を決めて守り続ける根気の話です。決めた一行に、日々の判断を合わせるだけ。才能ではなく運用です。

デザイナーに丸投げでいい?

見た目の実装は任せてよいですが、「何を約束するか」だけは自分で決めてから渡してください。ここが空白のまま発注すると、きれいだけど“らしくない”ものが返ってきます。

途中で、変えていい?

約束の“核”は簡単に変えないほうが像が育ちます。変えるのは表現(言葉づかいや見た目)まで。核をコロコロ変えると、それまで積み上げた像がリセットされます。

ガイドラインは必要?

人数が増えたら必要です。判断する人が増えるほど、ぶれやすくなる。「これはOK/これは違う」を言葉にしておくと、誰が担当しても“らしさ”が保てます。

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