— 01 —トーン・オブ・ボイスとは
トーン・オブ・ボイスとは、ブランドが言葉で語るときの一貫した「らしさ」のことだ。何を言うか(メッセージ)と同じくらい、どう言うか(語り口)がブランドの印象を左右する。丁寧なのか気さくなのか、硬いのか柔らかいのか──その語り口の設計を指す。
ここで大切なのが、Voice(声)とTone(表情)の区別だ。Voiceは、どんな場面でも変わらないブランドの人格そのもの。Toneは、その人格が状況に応じて見せる表情の変化だ。人にたとえるなら、性格は同じでも、喜ぶ場面と謝る場面で口調が変わるのに近い。
この二層を分けて考えると、「らしさは保ちながら、場面には柔軟に対応する」という一見難しい両立が、設計として扱えるようになる。
正直、声と表情を分けるって言葉にすると簡単なんですけど、いざ書くと「これは声かな、表情かな」と毎回迷うんですよね。慣れるまではそこがいちばん楽しい悩みどころだったりします。
— 02 —なぜVoiceとToneを分けるのか
両者を分けるのは、混同すると一貫性と柔軟性のどちらかを失うからだ。Voiceだけで固めると、どんな場面でも同じ調子になり、謝罪の場でも軽く聞こえるといったずれが起きる。Toneだけを気にすると、場面ごとに人格が変わり、誰の声か分からなくなる。
Voiceは、ブランドの人格を数個の形容詞で言い切ることから始まる。たとえば「誠実で、親しみやすく、押しつけがましくない」といった具合に。これが、あらゆる文章に通底する変わらない土台になる。
Toneは、そのVoiceを保ったまま、場面ごとに調整する。歓迎の場面では明るく、トラブルの場面では落ち着いて丁寧に。同じ人格が、相手と状況を思いやって表情を変える、と捉えると設計しやすい。だから、まずVoiceという軸を固め、その上でTone の振れ幅を決める、という順序が理にかなっている。
— 03 —作り方と、統一のための基準
作り方の起点は、ブランドの人格を表す言葉を選ぶことだ。ただ形容詞を並べるだけでは曖昧なので、「こうは言う/こうは言わない」の対比で示すと実務で効く。「専門用語で威圧しない/かみくだいて伝える」のように、やることと避けることを併記する。
次に、その基準を具体例に落とす。同じ内容を、らしい言い方とらしくない言い方で並べて見せると、誰が書いても判断がぶれにくくなる。抽象的な指針より、良い例・悪い例の一覧のほうが現場では機能する。
こうしてまとめたものは、ブランドガイドラインの一部として運用する。ロゴや色の規定と並んで言葉のトーンを明文化しておくと、担当者が替わっても、あらゆる文章に同じ「らしさ」が宿るようになる。
— 04 —注意点と、はじめの一歩
注意したいのは、ガイドラインを作って終わりにしないことだ。使われなければ意味がない。実際の文章を書く人が迷ったときに開き、判断の拠り所にできてこそ生きる。だから、抽象論より具体例を厚くし、更新し続けることが大切になる。
はじめの一歩は、既存の自社の文章を数本並べて「これは自分たちらしい/らしくない」を話し合ってみること。らしさは、ゼロから作るより、すでにある言葉の中から見つけるほうが早い。まずは手元の言葉を見直すところから始めたい。
- トーン・オブ・ボイスは「何を言うか」と同じく「どう言うか」を設計する
- 変わらないVoiceを固め、その上で場面ごとのToneの振れ幅を決める
- 抽象的な指針より「言う/言わない」の対比と具体例が現場で効く